外傷整形外科医スイスの田舎へ短期留学する

整形外科医がスイスに1ヶ月間短期留学しています

30. 8日目 転子部骨折ではrotation評価が大変難しい

1. From Ukrine

いつもどおりカンファ

なんだか、衝撃的なX線・CTだ

下腿遠位骨幹部骨折だが、なんか異物が骨内に入っている

転位は全然ない骨折

 

左骨盤が折れている、腸骨の後方・PSIS・L4&L5の棘突起が折れており、なんだか皮膚もなさそうだ

なにか鋭利なものが刺さったようなことを思わせるCT

 

なんじゃこれ

 

電子カルテをみて、アナムネを翻訳してみると

1ヶ月前に地雷で受傷した患者だ

ウクライナから搬送されてきたそうである

Galo先生によると、スイスでは8箇所の病院でウクライナからの負傷者を受け入れているとのことである。

 

骨盤の骨折自体は荷重伝達部は折れていないので、固定はいらないだろうが

軟部損傷がひどいらしい

ずっとVACをつけているとのこと。本日OP室で交換予定である。

 

さて、昨日再脱臼して再整復した患者はせん妄でICU管理になったようだった

 

2.プレゼンチェック

Sommer先生に明日のプレゼンのスライドを見せた

Anteromedial cortex contactは興味深いから、最初のほうを削ろうと

コンセプトは理解してもらえたようだし

True lateral viewでは見えづらいこともわかっていただけたようだった

とりあえず、この英語の拙さをどうにかしたいものである

プレゼンの練習することで、少しずつ上手にするしかないだろう

 

3.rotationについて

大腿骨のrotationはどうチェックしていると聞かれたので

AP viewを出して、ひざに行ってpatellaの位置でみていることを告げた

だが、転子部ではきれいな近位のAPをだすことが難しい(特に、rotationエラーを起こしそうな不安定な骨折では)と思う

Sommer先生の考えでは、preciseに分かる方法はないだろう

CT撮らないとむりだと思っているとのこと

なぜそういう話になったかというと、転子部でyoung surgeonが8例ほどエラーしたのをリオペしたかららしい。

術後に仰臥位にすると、通常自然の肢位では下肢が軽度外旋するが内旋していた症例があり

CTをとると50度くらい転位していた

 

それは中野2C、旧AO分類AO31-A1.3のレアケースである。

まず、X線をみせられて、どう思うかと聞かれ

少しneck骨片がanterior rotationしているが、AMCは必ずあるタイプなのでそんなに問題ないんじゃないかなぁと伝えた

自分もこのX線だとそう思うし、セミナーの会場でもみんなそう手を挙げたと

ところが!

術後の肢位の写真をみると、たしかに内旋である

CTををみると50度内旋

やはり小転子がすっ飛んでいるとわかりづらいものである。

 

Sommer先生の考えとしては、fracture tableに乗せて整復はまぁまぁうまく行ったが

ハローリーマーを使わず、コニカルリーマーをしようしたため、ちゃんと穴が掘れていないところに後方寄りからネイルをいれて、近位骨片が押し上げられるような形で外旋して固定してしまったのではないかとのこと。

普通ならラグをうつときにかなり打ち上げになるので、なんかヘンだ!って気づくべきところだがスルーしちゃったのかなぁと。

 

2016年くらいから、リオペの方法で新しい方法をやっているので論文にしようと集めているが、まだ6例で書けてないとのことである

新しいアイディアなので、非公開でメモにしておきます