外傷整形外科医スイスの田舎へ短期留学する

整形外科医がスイスに1ヶ月間短期留学しています

35. 10日目-1 踵骨偽関節

1. 踵骨偽関節

今日は、COVID-19で1週間延期になった偽関節の手術

Joint depression typeのSanders IIIABである

踵骨骨折の偽関節は珍しい

初回の手術はたいへんきれいにいってるが、subtalrの関節面を支えるスクリューが3本とも折損(2.7mm規格)し、関節面の骨片だけが全体としてすこーしだけおちてその部分が偽関節になっている

1ヶ月前のCTだと、一部は癒合しているようにも見えるけど

労災で痛みが強いらしい

 

2.Extended lateral approach

まずアプローチ

Sommer先生はExtended lateral approach信者である

Lはなだらかにしましょう、直角はだめだ

創部がなおらなかったことなんてほとんどないんだけど

という信者である

縦皮切は腓骨後縁とアキレス腱の中間、底側の皮切は腓骨遠位端と踵底側の皮膚との中間で遠位は前方突起の位置に合わせて少し内側に向けることもあると

だからやや底側の皮切の位置は教科書より頭側寄りだと思うとのこと

縦皮切がしっかり後方に寄っているので、LCAの分枝を傷つけていないのだろうと私は結論づけた

 

3.展開、抜釘

腓腹神経と遠位では腓骨筋腱に注意

剥がして剥がして頭側にflapを挙げる

距骨の底側からK-wireを挿入して皮弁をよける

そして、distractorでしっかり関節面を見てみる

1-2mmくらいのgapがあったはずだが、線維性軟骨に覆われていてsubtalarは大変きれいだった

プレートを抜去し、折損したスクリューも抜去

うーん

全然偽関節っぽくない

最後のCTから1ヶ月経過、今、術後5ヶ月

subtalarもかなりの力でおしてみたけどびくともしない

癒合してきているのでは、、、

透視でみても、関節面の高さもそんなにわるくない、step offは全然ない

・このまま何もしない

・骨切りして、骨移植して、もう一度プレート固定する→同じことが起きるリスクがたかいか?

癒合しつつあると判断して、VA fusion plateでスクリュー固定を追加して固定力を高めて終了とした

 

4. 骨移植について

2.7mmはやっぱり弱いとおもっているとのこと

来年以降にLCPシリーズがすべて変わるから、またその後に期待とのこと

もうプレートの形・スクリューの大きさは会議で全部決まったので、あとは販売にむけて動き出しているとのことである

 

骨移植はいらないという人が多いことも知っているが、Joint depression typeでは2.7mmのスクリューで支えきれずにおちてくることがあるとおもっているので

心配だと思う時は、アログラフトをつかっている、初期強度が必要なときは腸骨のautograftをつかっているとのこと

Artificial boneについてはちょっとタイミングがあわず聞けなかった

今度聞いてみよう

 

5. 痛みの原因と内側のスクリューの出っ張り

内側のスクリューが載距突起の下に出ていたので、

スクリューはいつもBroden's viewで確認しているとのこと

載距突起の下に出ているかは軸位で見えるのでは?と質問したところ

術中によい軸位を得るのは難しいのでやっていないと

そんなに難しくないと思われるけどなぁ

角度を誤ると見えないことは注意しないといけないが

ここらへんは頑固一徹親父のSommer先生なのである

 

労災の人は治りがわるいという話になった

「スイスへの出稼ぎ労働者で、スイスの労災を使えば、元の国からするとかなり髙い額の給与が保障されるし

痛い痛いといっていれば、住んでご飯も食べれてタバコも吸える。そういうのが悪いのかもしれない。

痛いと言っても普段は歩いてるんだしね。

怪我のせいで別の職種に変わらないといけないなとなったとき、教育レベルが高い人たちは理解してそうしてくれるんだけどねぇ」とのこと

共通のネタである。